
交通の手段であったりということで、あまり遊びの場とは認められていないようです。そこで海で遊ぶ者の代表として、今年の夏「海の日」あたりまでに日本を一周して、ヨットの話だとか、アメリカズカップの話とかをお伝えし、自分よりもっともっと海でうまく遊んでいらっしゃる人も多いので、その人たちの話を聞こうと思ってヨットを借りまして、日本を回っているところです。
吉村 最近、川の方では洪水を防ぐために堤防をどんどん高くしたら、人々が川に近づくことができなくなった。これは具合が悪いから、もっと川に親しむようにと“親水”という言葉を使い始めておりますが、土坂長官、こういったことがこれからも重要なんでしようね。
土坂 職掌柄、海への思いというより、お願いを二つほど申しあげたいのです。
わが国は、周りが海に囲まれておりますので、漁業だとか貿易だとか、その国の基盤になるような活動を海に依存している−海から大きな恩恵を受けております。従って安全できれいな海というものを大切にしなければいけないと思うわけですが、ふだん私たちは陸で生活しておりますので毎日の生活の中で海とのかかわりはそうあるものではありません。
ただ、きれいな海を守るといっても、これは国民全体の力でないとできることではないと思っておりまして、そういう意味でみんなが海に目を向けていただきたいと思っているわけです。
七月二十日が、今年から「海の日」ということで国民の祝日となりましたし、ちょうど海洋法条約も新たに施行されるという時期になりました。一つの機会だと思いますので、この機会に海に関心を持っていただけるとありがたいなと思います。
もう一つは海上保安庁のことを申し上げたいのですが、保安庁というのは、海のお巡りさんでありまして、陸のお巡りさんというのは、街角に交番がありますし、テレビをつければ刑事として登場しますので、昔からみんななじみがあるわけですが、保安庁は海の上で仕事をしておりますので、いま一つなじみが薄いのです。
昔「喜びも悲しみも幾年月」という映画がありました。あれは灯台守の夫婦の映画で、灯台守が船の安全を祈って、雨の日も風の日も毎日灯を掲げて船を守ります。あの映画に心を打たれるのは、私は地味だけど大切な仕事をして一生を終わる−。その中にすべての喜びも悲しみもあるという、人の生き方が出ていて、それが心を打つのだと思います。
海上保安庁には一万二千人の職員がおりますが、あの映画と同じように大変地味な仕事を毎日毎日危険の中でやっておりますので、陸のお巡りさん同様、海の方にも目を向けていただきたい−この

前ページ 目次へ 次ページ